キッチンなどで小さな茶色い甲虫を見つけた際、それが本当にタバコシバンムシなのか、それともよく似た別の害虫なのかを見分けることは、適切な対策を講じる上で重要です。ここでは、タバコシバンムシの形態的特徴と、特に混同しやすい類似種であるジンサンシバンムシとの見分け方について、少し詳しく解説します。タバコシバンムシ(Lasioderma serricorne)は、体長がおよそ2~3ミリメートル程度の小型の甲虫です。体型は楕円形で、全体的に丸みを帯びています。体色は赤褐色から茶褐色で、光沢はあまりありません。特徴的なのは、頭部が下向きに隠れており、背面から見ると頭部がほとんど見えない点です。また、背中(上翅)には点刻や条線(スジ)がなく、のっぺりとした滑らかな印象を受けます。触角は、根元から先端に向かって太さが徐々に変わる鋸歯状(のこぎりの歯のような形)をしています。これに対して、タバコシバンムシと非常によく似ており、同じく乾燥食品などを加害する害虫にジンサンシバンムシ(Stegobium paniceum)がいます。ジンサンシバンムシも体長は2~3ミリメートル程度で、体色も赤褐色と、タバコシバンムシと酷似しています。しかし、いくつかの点で違いを見分けることができます。最も分かりやすい違いは、背中(上翅)の模様です。ジンサンシバンムシの上翅には、縦に走る明瞭な点刻列(小さな点が並んだスジ)があります。光に当ててよく観察すると、このスジ模様が確認できるはずです。タバコシバンムシにはこのスジがありません。また、触角の形状も異なります。ジンサンシバンムシの触角は、先端3節が他の節よりも明らかに大きく膨らんでいるのが特徴です。タバコシバンムシの鋸歯状の触角とは形状が異なります。発生源となる食品にも若干の違いはありますが、どちらも非常に広食性であるため、食品の種類だけで判断するのは難しいでしょう。もし自宅でこれらの虫を発見した場合は、ルーペなどで背中のスジ模様や触角の形状をよく観察してみてください。正確な同定が難しい場合は、スマートフォンのマクロレンズなどで撮影し、専門家や害虫駆除業者に相談するのも良い方法です。