浴室や洗面所、キッチンといった水回りで、壁にハート型の小さな虫が止まっているのを見かけたことはありませんか。その正体は、多くの場合「チョウバエ」です。体長はわずか数ミリと小さいですが、一度発生するとあっという間に数が増え、不快なだけでなく衛生面でも問題となる厄介な害虫です。効果的な対策を講じるためには、まず彼らの生態と発生源を正しく理解することが不可欠です。チョウバエは、その生涯のほとんどを水中で過ごします。成虫が産み付けた卵は、わずか数日で孵化し、幼虫、蛹(さなぎ)の期間を汚泥やヘドロの中で過ごし、2週間ほどで成虫となって飛び立ちます。つまり、私たちが目にしている飛んでいる成虫は、水回りのどこかに存在する「汚泥」から発生しているのです。主な発生源として挙げられるのが、浴室やキッチンの排水口です。髪の毛や石鹸カス、皮脂、食べ物カスなどが溜まってできたヘドロは、チョウバエの幼虫にとって最高の餌場兼住処となります。また、見落としがちなのが、浴槽の下、特にユニットバスのエプロンと呼ばれるカバーの内側です。ここは湿度が高く、石鹸カスや髪の毛が流れ込んでヘドロ化しやすく、大規模な発生源となっているケースが非常に多いのです。対策の基本は、この発生源である汚泥を徹底的に除去することです。まずは、市販のパイプクリーナーを使って排水口の内部を清掃しましょう。粘度の高いジェルタイプのクリーナーは、パイプの側面に付着した汚れを効果的に分解してくれます。そして、60度程度のお湯を勢いよく流すのも、卵や幼虫を洗い流し、死滅させるのに有効です。ただし、熱湯は排水管を傷める可能性があるため注意が必要です。エプロンが外せるタイプのユニットバスであれば、勇気を出してカバーを外し、内部の汚れをブラシで徹底的にこすり落としましょう。発生源を断つことこそが、チョウバエ対策の最も重要で確実な第一歩なのです。