去年の5月の連休明け、私はカーポートの天井の隅に、親指の先ほどの大きさの奇妙な塊ができているのに気づきました。灰色で、小さな穴がいくつか開いていました。蜂の巣の作り始めだとすぐに分かりましたが、「まあ、まだ女王蜂一匹だけだろう。そのうちどこかへ行くだろう」と、私は何の根拠もなく高をくくってしまったのです。それが、あの夏の悪夢の始まりでした。最初のうちは、一匹の大きなアシナガバチが巣の上にとまっているだけでした。しかし、梅雨に入る頃には、巣は手のひらサイズにまで成長し、数匹の働き蜂が巣の周りを飛び回るようになっていました。さすがにまずいと思い始めましたが、蜂の数が増えたことで、自分で駆除する勇気はすでになくなっていました。そして夏本番、8月になると、巣はバレーボールほどの大きさにまで達し、数十匹の蜂が常時巣の周りを警戒するように飛び交う、まさに要塞と化していました。車を停めるたびに、蜂が威嚇してくるため、家族はカーポートに近づくことさえできなくなりました。洗濯物を干すのも命がけで、窓を開けることすらためらわれる日々。私のたった一度の「まあ、いいか」という油断が、家族を危険にさらし、自宅での平穏な生活を完全に奪ってしまったのです。結局、私は高額な費用を払ってプロの駆除業者に来てもらうことになりました。防護服に身を包んだ業者が、巨大化した巣をいとも簡単に駆除していく様子を見ながら、私は深い後悔の念に駆られました。あの親指の先ほどの大きさだった春の日に、すぐに行動していれば、こんな大ごとにはならなかったはずです。この経験を通して、私は蜂の巣の作り始めを見つけたら、絶対に放置してはいけないという教訓を骨身に沁みて学びました。