私たちのような害虫駆除の専門家のもとには、「最近、頻繁に蜂が家の中に入ってくる」という相談が数多く寄せられます。一匹や二匹なら偶然かもしれませんが、もし立て続けに蜂が侵入してくるようであれば、それは単なる偶然ではなく、より大きな問題が潜んでいる危険信号と捉えるべきです。我々が現場で調査して最も多く発見する原因は、家の敷地内、あるいはごく近隣に蜂の巣が存在するケースです。軒下や屋根裏、換気フードの中、生い茂った庭木の中など、普段あまり目が届かない場所に巣が作られており、そこから働き蜂が餌を探しに出かけたり、巣の周辺を警戒して飛び回ったりする過程で、開いた窓などから室内に迷い込んでくるのです。この場合、侵入してくる蜂は、いわば巨大な蜂社会の「斥候」にすぎません。根本原因である巣を放置すれば、蜂の数は増え続け、いずれ深刻な被害につながる恐れがあります。また、家の構造的な問題が原因となっていることも少なくありません。例えば、エアコンの配管を通すために壁に開けた穴の隙間を埋めるパテが劣化して剥がれていたり、換気扇や通気口のフィルターが破損していたりすると、そこが蜂の格好の侵入経路となります。特にミツバチなどは、ほんの数ミリの隙間からでも侵入し、壁の中や床下といった閉鎖空間に巨大な巣を作ってしまうことさえあります。蜂が頻繁に家に入ってくるという現象は、私たちの住まいが発するSOSのサインかもしれません。その原因を正しく突き止め、根本的な対策を講じることが、家族の安全を守る上で非常に重要なのです。