蜂の巣の被害に悩まされないための最も賢明な方法は、巣が作られてから駆除するのではなく、そもそも巣を作らせない「予防」にあります。特に、女王蜂が巣作りを開始する春先（４月〜５月頃）に適切な対策を講じておくことで、蜂が寄り付きにくい環境を作り、夏以降の深刻な被害を未然に防ぐことが可能です。まず、最も手軽で効果的なのが、蜂が巣を作りそうな場所に、あらかじめ蜂駆除用の殺虫スプレーを吹き付けておくことです。薬剤の多くには、蜂を駆除する効果だけでなく、蜂が嫌がって近づかなくなる「忌避効果」があり、その効果は１〜２週間程度持続します。軒下、ベランダの天井、窓枠、玄関の庇、エアコンの室外機の裏、換気口の周りなど、過去に巣を作られたことがある場所や、雨風が当たりにくい場所を中心に、定期的にスプレーしておくことをお勧めします。特に、女王蜂が一匹で巣場所を探し回っている時期にこの対策を行うことで、巣作りの候補地から除外させることができます。物理的な対策も有効です。通気口や換気扇のカバーに目の細かい防虫ネットを張ることで、蜂が内部に侵入して巣を作るのを防げます。また、家の周りの環境整備も重要です。使わない植木鉢や木材などを放置していると、その隙間が蜂にとって格好の営巣場所になることがあります。庭木の手入れを怠り、枝葉が鬱蒼と茂っている状態も、蜂に隠れ家を提供することになります。定期的に剪定を行い、風通しを良くしておくことも予防に繋がります。これらの予防策は、一度行えば万全というわけではありません。春から初夏にかけて、定期的な点検と対策を継続することが、蜂のいない安全で快適な住環境を維持するための鍵となるのです。