衣替えの季節、久しぶりにタンスの奥から引っ張り出したお気に入りのウールのカーディガン。袖を通そうとした瞬間、目に飛び込んできたのは、数ミリ程度の小さな、しかし確実な穴でした。「えっ、なんで?」慌てて全体を確認すると、無数の小さな穴が点々と空いているではありませんか。よく見ると、カーディガンの上に、長さ5ミリほどの赤茶色っぽい毛虫のようなものが、のそりのそりと動いています。最初はただのゴミか糸くずかと思いましたが、明らかに生きている。背筋がゾッとしました。すぐにスマートフォンで「セーター 穴 虫」と検索。出てきた画像は、まさに目の前にいる虫、そして私のカーディガンと同じような被害状況でした。その名は「ヒメカツオブシムシ」。名前は聞いたことがありましたが、まさか自分の家で、しかもお気に入りの服を食べているなんて、ショックで言葉もありませんでした。さらに調べてみると、この虫の幼虫はウールやシルクなど動物性繊維が大好物で、暗くてホコリっぽい場所を好むとのこと。まさに、タンスの奥にしまいっぱなしにしていた私のカーディガンは、彼らにとって最高のレストランだったのでしょう。被害はカーディガンだけにとどまりませんでした。同じ引き出しに入れていた他のウール製品や、シルクのスカーフにも同様の穴が見つかり、中にはボロボロになっているものも。引き出しの隅には、虫の糞らしき砂粒のようなものや、脱皮した殻のようなものまで落ちていました。もう、その引き出しを開けることすら恐怖でした。すぐさま、引き出しの中身を全て出し、被害にあった衣類は泣く泣く処分。まだ無事だった衣類も全て洗濯し直し、引き出しの中は掃除機をかけ、徹底的に拭き掃除をしました。そして、防虫剤をこれでもかと投入。あの毛虫のような姿と、穴だらけになった服の光景は、今でもトラウマです。この一件以来、衣類の保管には細心の注意を払うようになりました。洗濯をしっかりすること、収納ケースに入れること、防虫剤を定期的に交換すること。そして何より、タンスの肥やしにしないこと。定期的に服を取り出して状態を確認し、風を通すことが、あの恐怖を繰り返さないための何よりの対策だと痛感しています。
タンスの肥やしに忍び寄るヒメカツオブシムシ恐怖体験