これは、都心に近いマンションに一人暮らしをするCさんの事例です。Cさんはファッションが好きで、クローゼットにはたくさんの衣類が収納されていました。仕事が忙しく、部屋の掃除は週末にまとめて行う程度。衣替えも、シーズンオフの服をクローゼットの奥に押し込むだけで、特別な手入れはしていませんでした。ある年の秋、久しぶりに袖を通そうとしたウールのコートに、数カ所、虫に食われたような小さな穴が開いているのを発見しました。最初は「どこかに引っ掛けたかな?」程度にしか考えていませんでした。しかし、その翌シーズン、別のセーターにも同様の穴が見つかり、さらにクローゼットの床に、茶色い砂のような粒と、小さな毛虫の抜け殻のようなものが落ちているのを見つけ、ようやく異変に気づきました。インターネットで調べた結果、ヒメカツオブシムシの仕業である可能性が高いことがわかりました。慌ててクローゼットの中を点検すると、被害は予想以上に広がっていました。特に、ウールやカシミヤなど、比較的高価な衣類の多くに虫食い穴が見つかり、中には修復不可能なほどダメージを受けているものもありました。被害総額を考えると、Cさんは愕然としました。発生源を特定しようとクローゼットの奥を探ると、数年前に購入し、一度着たきりになっていたファー付きのストールが見つかりました。そのファー部分に、多数の幼虫と抜け殻、糞が集中していたのです。おそらく、このストールが発生源となり、クローゼット内に被害が広がっていったと考えられました。Cさんは、被害にあった衣類の多くを処分せざるを得ませんでした。そして、専門の害虫駆除業者に依頼し、クローゼットと部屋全体の徹底的な駆除と清掃を行いました。費用も手間もかかりましたが、これを機に、衣類の管理方法を根本的に見直すことにしました。この事例からわかるのは、ヒメカツオブシムシの被害は、気づかないうちに静かに進行し、発見した時には手遅れになっているケースが多いということです。特に、普段あまり着ない衣類や、クローゼットの奥など、目の届きにくい場所は注意が必要です。定期的な衣類のチェックと、適切な保管、そして清掃を怠らないことが、このような悲劇を防ぐためにいかに重要であるかを物語っています。
気づかぬうちに被害拡大ヒメカツオブシムシ事例