家の中で、普段見かける小さな蟻とは明らかに違う、大きな黒い蟻に遭遇して驚いた経験はありませんか。その姿に不安を感じる方もいるかもしれませんが、まずはその正体を知ることが大切です。日本家屋でよく見かける大型のアリとしては、主にクロオオアリやムネアカオオアリが挙げられます。クロオオアリは、その名の通り全体的に黒く光沢があり、体長は働きアリで7ミリから12ミリ程度、女王アリに至っては18ミリ近くにもなる日本最大級のアリの一種です。一方、ムネアカオオアリは、頭部と腹部は黒いですが、胸部と腹柄節(胸と腹をつなぐ部分)が特徴的な赤褐色をしています。大きさはクロオオアリとほぼ同等で、こちらも大型のアリです。これらの大型アリは、本来は屋外の土の中や朽ち木などに巣を作って生活しています。雑食性で、昆虫の死骸やアブラムシが出す甘露、花の蜜、樹液などを餌としていますが、人間の食べこぼしや食品にも引き寄せられることがあります。彼らが家の中に入ってくる主な理由は、餌を探している場合がほとんどです。特に、春から秋にかけての活動期には、働きアリが巣から離れた場所まで餌を探しに出かけるため、偶然家の中に迷い込んでしまうことがあります。窓の隙間やドアの下、壁のひび割れ、換気扇、配管の隙間など、わずかな隙間からでも侵入してきます。基本的に、クロオオアリやムネアカオオアリは毒針を持っておらず、人を積極的に刺すことはありません。しかし、身の危険を感じると顎で噛みつくことがあり、大型であるため噛まれると多少の痛みを感じることがあります。また、噛みついた際に蟻酸という弱い酸を吹きかけることがありますが、これが人体に深刻な影響を与えることは稀です。とはいえ、家の中で頻繁に見かける場合は、近くに巣がある可能性や、家の中に餌となるものが放置されている可能性が考えられます。その姿に驚くのは当然ですが、種類と生態を知ることで、冷静な対処と適切な対策に繋げることができるでしょう。
家に出る大きな黒い蟻の正体は何か