まさか自分の家が鳩に巣を作られるなんて、想像もしていませんでした。都心に近いマンションに住んで数年、快適な生活を送っていたのですが、ある朝、ベランダに見慣れない小枝が落ちていることに気づきました。最初は風で飛んできたのだろうと気に留めなかったのですが、翌日も、その翌日も、小枝や枯れ草のようなものが増えていきます。「まさか…」と思い、エアコンの室外機の裏を覗き込んで、私は言葉を失いました。そこには、雑然と積み上げられた小枝と、その中央に鎮座する二羽の鳩がいたのです。巣作りを始めていたのでした。平和の象徴なんてとんでもない、その瞬間から私の恐怖と戦いの日々が始まりました。鳩は私がベランダに出ると威嚇するように鳴き、フンはあっという間にベランダを汚していきました。洗濯物を干すのもためらわれるほどの汚染状況で、窓を開けることすら嫌になりました。特に酷かったのはフンによる悪臭と、羽毛や乾燥したフンが風で舞い上がり、健康面での不安を感じたことです。自分で巣を撤去しようとも考えましたが、調べてみると鳩は鳥獣保護管理法で守られており、卵や雛がいる巣を勝手に撤去することは法律違反になる可能性があると知りました。どうすればいいのか分からず、途方に暮れていた時、マンションの管理会社に相談しました。幸い、巣にはまだ卵がなかったため、専門業者を手配してもらい、巣の撤去と清掃、そして鳩よけネットの設置を行ってもらうことができました。費用はかかりましたが、あのストレスから解放された安堵感は何物にも代えがたいものでした。この体験を通して、鳩の巣作りは決して他人事ではないと痛感しました。ベランダに少しでも異変を感じたら、早めに対策を講じることの重要性を身をもって学びました。もう二度と、あの黒い影とフンに悩まされる日々は送りたくありません。