本に虫がいるのを見つけた、あるいは虫喰いのような跡を発見したとき、原因となっている虫の種類を特定できれば、より効果的な対策を立てやすくなります。虫の種類によって、本の食べ方や残す痕跡には特徴があります。ここでは、代表的な本の虫とその被害痕について解説します。まず、「シミ(紙魚)」による被害です。シミは本の表面を舐めるように食べるため、被害痕は浅く、不規則な形になることが多いです。特に、紙の光沢が失われたり、表面がけば立ったりしている場合はシミの可能性があります。また、本の装丁に使われている糊やデンプン質を好むため、表紙と本文の間や、背表紙の内側などに被害が集中することもあります。糞は非常に小さく、見つけるのが困難な場合が多いです。次に、「チャタテムシ」です。チャタテムシは主にカビを食べるため、直接的に紙を大きく食い荒らすことは少ないですが、カビと共に本の表面を削り取ることがあります。被害痕はシミに似ていますが、湿気の多い環境で発生するため、本にカビが見られる場合はチャタテムシの可能性が高まります。糞は微細な粒状です。最も特徴的な被害痕を残すのが「シバンムシ」です。シバンムシの幼虫は本の内部に潜り込み、紙を食べながらトンネルを掘り進みます。そのため、本のページを貫通するような、あるいはページに沿って進むような、細かいトンネル状の食痕が見られます。成虫になる際に、直径1〜2ミリ程度のきれいな円形の穴を開けて外に出てくるため、本の表紙やページに小さな丸い穴が多数開いていたら、シバンムシの被害である可能性が非常に高いです。トンネル内や穴の周辺には、細かい粉状の糞(フラス)が詰まっていることもあります。これらの被害痕の特徴を注意深く観察することで、原因となっている虫の種類をある程度推測することができます。例えば、表面的な被害ならシミやチャタテムシ、内部にトンネルや丸い穴があればシバンムシ、といった具合です。正確な特定は難しい場合もありますが、被害痕から虫の種類を推測することは、適切な駆除方法や予防策を選択する上で重要な手がかりとなるでしょう。
本の虫害特定を助ける虫の種類別被害痕解説