それは、長年探し求めていた絶版の画集を、ようやく古書店で見つけた日のことでした。少し埃っぽい匂いはしましたが、状態は比較的良く、私は喜び勇んで家に持ち帰りました。リビングの本棚に飾り、時折ページをめくっては美しい絵を楽しんでいました。しかし、数週間が経ったある日、画集の近くに置いてあった別の本に、小さな茶色い粉がこぼれていることに気づきました。最初はただのゴミかと思いましたが、よく見ると画集の表紙にも同じような粉が付着しており、さらに数ミリ程度の小さな甲虫が数匹、本の隙間を動き回っているのを発見したのです。背筋が凍るような感覚でした。インターネットで調べると、それはシバンムシという本の害虫であることが分かりました。幼虫が本の内部を食い荒らし、成虫が穴を開けて出てくるというのです。あの茶色い粉は、虫の糞や食いカスだったのです。ショックでした。せっかく手に入れた貴重な画集が、虫の巣窟になっていたなんて。しかも、他の本にも被害が及んでいるかもしれない。私はパニックになりかけながらも、すぐに行動を開始しました。まず、被害にあった画集と周辺の本をビニール袋に密閉し、他の本から隔離しました。そして、本棚の本を全て取り出し、棚板を丁寧に掃除機で吸い、アルコールで拭き上げました。画集については、専門的な駆除方法も検討しましたが、まずは自分でできることを試そうと、一冊ずつページをめくりながら、筆で虫や粉を払い落とし、天気の良い日に風通しの良い場所で虫干しをしました。数日間、この作業を繰り返し、ようやく虫の姿は見えなくなりましたが、画集には小さな穴がいくつも残り、見るたびにあの時の恐怖と悲しみが蘇ります。この経験から、古本を購入する際は虫がついていないか細心の注意を払うこと、そして自宅の本棚も定期的に点検し、清潔に保つことの重要性を痛感しました。
古本から現れた小さな虫との格闘体験談