私の部屋の同居人蜘蛛との静かなる日々
私が現在の古いアパートに引っ越してきて、しばらく経った頃のことです。ある晩、本を読んでいると視界の端を何かがサッと横切りました。目を凝らすと、それは手のひらを広げたくらいの大きさもある、見事なアシダカグモでした。正直に言って、最初の感想は「恐怖」以外の何物でもありませんでした。あんなに大きな蜘蛛が、自分のプライベートな空間にいるという事実が、私の安眠を脅かすには十分すぎるほどのインパクトを持っていたのです。その夜は、蜘蛛がどこへ行ったのか気になって、なかなか寝付けませんでした。しかし、恐怖と同時に湧き上がってきたのは、純粋な好奇心でした。一体なぜ、こんなところにいるのだろう。インターネットで調べてみると、アシダカグモはゴキブリを主食とする「益虫」であり、家の守り神とさえ呼ばれていることを知りました。臆病な性格で、人間に害をなすことはほとんどない、と。その情報を知ってから、私の中で蜘蛛に対する見方が少しずつ変わっていきました。彼は侵入者ではなく、むしろ家賃も払わずに家の害虫を駆除してくれる、ありがたい「同居人」なのかもしれない、と。もちろん、いきなり目の前に現れれば今でも驚きます。しかし、以前のようなパニックに近い恐怖は感じなくなりました。部屋の隅でじっとしている彼を見かけると、「今日もパトロールご苦労様」と心の中で声をかけるくらいの余裕さえ生まれてきたのです。この静かなる同居生活がいつまで続くかは分かりませんが、一つの生き物の存在を多角的に知ることで、世界の見え方が少しだけ豊かになったような気がしています。