家の中でゴキブリ本体に遭遇するだけでも、心臓が縮み上がるような思いをするのに、その卵、つまり卵鞘を発見してしまった時の精神的ダメージは、想像以上に大きいものです。私自身、かつてキッチンの隅で、あの黒褐色の小さなカプセルを見つけてしまった経験があります。それがゴキブリの卵だと知った瞬間、全身に鳥肌が立ち、吐き気すら覚えました。問題は、その卵鞘を駆除した後も続く、見えない恐怖との戦いです。「あの卵鞘は一つだけだったのか?」「もしかしたら、他にも気づいていないだけで、家のどこかにまだ卵が隠されているのではないか?」「すでに孵化して、小さなゴキブリが部屋のどこかを這い回っているのではないか?」そんな疑念が頭から離れなくなり、夜も安心して眠れなくなってしまいました。ちょっとした物音や、壁のシミ、床に落ちている小さなゴミまでもが、ゴキブリやその卵に見えてしまう。いわゆる「ゴキブリ恐怖症」が悪化した状態です。家が、本来なら最も安心できるはずの場所なのに、いつ敵(ゴキブリ)が現れるか分からない、常に警戒しなければならない場所に感じられてしまうのです。このままではいけない。そう思い、私は徹底的な対策に乗り出すことにしました。まず、家中を隅々まで大掃除し、ゴキブリの隠れ家になりそうな場所をなくしました。そして、市販されているあらゆる種類のゴキブリ対策グッズを試しました。ベイト剤(毒餌)を家の各所に設置し、侵入経路となりそうな隙間を徹底的に塞ぎ、定期的に燻煙剤を焚きました。効果があると言われるものは、とにかく試してみたのです。重要なのは、これらの対策を「徹底的にやった」という事実が、少しずつ私の心を落ち着かせてくれたことです。「これだけやったのだから、もう大丈夫だろう」と、自分に言い聞かせることができるようになったのです。もちろん、それでも完全に不安が消えたわけではありません。しかし、以前のように常に何かに怯えている状態からは脱却できました。ゴキブリの卵を発見した経験は、間違いなくトラウマになります。しかし、その恐怖にただ打ちのめされるのではなく、具体的な行動を起こし、自ら安全な環境を作り出す努力をすることで、少しずつ心の平穏を取り戻すことができるのだと、私は自分の経験を通して学びました。
ゴキブリ卵発見後のトラウマ克服への道