あれは夏の終わりの、よく晴れた日のことでした。日差しが強く、洗濯物がよく乾きそうだと、私はいつものようにベランダいっぱいに洗濯物を干しました。シーツやタオル、白いTシャツなどが気持ちよさそうに風に揺れています。夕方、カラリと乾いた洗濯物を取り込むのは、主婦にとってささやかな喜びの一つです。私は鼻歌交じりに洗濯物を一枚一枚畳んでいました。白いシーツを広げた、その時です。視界の端に、何か黒い点が動いたような気がしました。「気のせいかな?」そう思いながらも、念のためシーツの表面をよく見てみると…いました。緑色の、あの独特なフォルム。カメムシです。しかも一匹ではありません。シーツのあちこちに、数匹のカメムシがしっかりと張り付いていたのです。思わず「ひっ!」と短い悲鳴を上げて、シーツをその場に落としてしまいました。心臓がバクバクと音を立て、全身に鳥肌が立ちました。カメムシは、刺激を与えると強烈な悪臭を放つことで知られています。下手に触って、あの臭いを家の中に充満させるわけにはいきません。私は恐る恐る、割り箸を使ってカメムシを一匹ずつシーツから剥がし、ベランダの外に逃がしました。しかし、恐怖はそれだけでは終わりませんでした。他の洗濯物も念入りにチェックすると、Tシャツの袖口に小さなクモが潜んでいたり、タオルの間に羽虫が挟まっていたりと、次々に虫を発見してしまったのです。その日は、取り込んだ全ての洗濯物をもう一度入念にチェックし、部屋の中でパタパタと払い落とす作業に追われました。すっかり日も暮れ、疲れ果ててしまいました。あの出来事以来、私は洗濯物を取り込む際に、細心の注意を払うようになりました。特に白い洗濯物や、風の強い日は要注意です。外干しの気持ちよさは捨てがたいですが、虫との遭遇はもうこりごり。あの恐怖体験は、私の洗濯習慣を見直す大きなきっかけとなったのです。
恐怖洗濯物と一緒に虫を取り込んだ日