庭の手入れや公園での散歩中、気づかないうちに毛虫に触れてしまい、突然の激しい痛みに襲われた、という経験はありませんか。毛虫の中には、体に微細な毒針毛(どくしんもう)を持っている種類がいます。この毒針毛が皮膚に刺さると、強い痒みや痛み、そして赤いブツブツとした発疹(皮膚炎)を引き起こします。代表的なのはチャドクガやドクガの幼虫です。これらの毛虫は、ツバキやサザンカなどの樹木に発生することが多く、風に乗って飛んできた毒針毛に触れただけでも症状が出ることがあります。また、毛虫の抜け殻や死骸にも毒針毛が残っているため、注意が必要です。毛虫による皮膚炎の痛みは、チクチク、ピリピリとした刺激痛であることが多く、痒みも非常に強いのが特徴です。症状は、触れてから数時間後に出てくることもあります。もし毛虫に触れてしまった、あるいは触れた可能性がある場合は、絶対に患部を掻いたり、こすったりしてはいけません。掻くことで毒針毛がさらに深く皮膚に刺さったり、周囲に広がったりして、症状を悪化させてしまうからです。まず行うべき応急処置は、目に見えない毒針毛を取り除くことです。粘着テープ(セロハンテープやガムテープなど)を患部にそっと貼り付け、ゆっくりと剥がす作業を数回繰り返します。これにより、皮膚に刺さった毒針毛をある程度除去することができます。その後、石鹸を使ってシャワーなどで強く洗い流します。この時も、ゴシゴシこすらないように注意してください。毒針毛を取り除いた後は、抗ヒスタミン成分やステロイド成分が配合された軟膏を塗布します。痒みが強い場合は、患部を冷やすのも効果的です。ただし、アンモニア水や尿をかけるといった民間療法は、効果がないばかりか、皮膚炎を悪化させる可能性があるので絶対にやめましょう。これらの応急処置を行っても、痒みや痛みが強い場合、発疹が広範囲に及ぶ場合、あるいは目に入ってしまった場合などは、必ず皮膚科を受診してください。医師は、より効果の高いステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬の内服などを処方してくれます。毛虫皮膚炎は、適切な処置を行えば通常1~2週間程度で治癒しますが、掻き壊しによる二次感染などには注意が必要です。